null null null null

ディスクゴルフ第4回鹿児島オープンは、平成29年7月29日(土)、県立吉野公園コースにおいて晴天微風の中、全国からプロ30名のエントリーを得て、初日の開会式に至りました。

江原隆夫JPDGA会長の「冬場主体であった鹿児島開催の夏場移行の意義と問題点」のスピーチに、スタッフ一同改めて責務の重大さを喚起されました。望んだ晴天であるとは言え、真夏の太陽は容赦なく照りつけ、グリーンベレー(Green Beret)の戦闘環境の様相を呈してきました。大自然を背景とするこの競技、林間・オープンフィールド、さらにバーチャルポンドを巧みに、そしてパワフルにクリアーすることが,勝利への第一条件でありましょう。これを制するとなるとmarksmanship(射撃術)を至上とする件の米陸軍特殊部隊兵士の体力と精神力が求められる所以です。第1R18Hを滞りなく終えて早くも昼食時間に入りました。ニアピン競争は逆アイウエオ順の下り勾配80ⅿ。30名の選手が次々と自信を込めて投げ込んだ結果、優勝の栄冠は、男子が田添寛選手(福岡)、女子は兼弘真由実選手(栃木)が射止めました。女子の部で4連勝を狙った滋賀の加藤宏美選手の野望は残念ながら断たれました。巻き返しを期待します。
 昼食後、第2R18Hの開始後、日差しは益々強くなり、帽子(にも色々な形あり)や専用傘の出番となり、各部門での戦いは粛々と進んでいきました。この時点になると勝利を意識する者、一発逆転を図る者、最下位脱出にあがく者に区分され、野性に返った人類のサバイバルへの本能が吉野原頭に渦巻きました。
 午後4時を過ぎて初日の成績がまとまり始め、やがて翌日を期しての流れ解散となりました。ここまでのプロ各部門の成績は以下のとおり。
オープン 1位青木雅樹107 2位梶山学108 3位岩﨑光洋114 4位梶山能安119 
レディース 1位塚本里香123 1位中川原友香123 3位加藤宏美124
マスター 1位江原隆夫128 2位廣中卓治130 3位田添寛141
グランドマスター 1位櫻井康生125 2位大島竜也126 3位西園良人133
シニアグランドマスター 1位金子栄治120 2位諸岡通容128 2位山田勝128 
 交流会は、桜島フェリー乗り場近くの「焼肉なべしま鹿駅ベイサイド店」。司会は言う。「ディスクゴルフという共通項で全国からお集りの皆さん、そで振り合うも多生の縁と言います。今宵はかみしもを脱いで無礼講で飲み食い、語り合いましょう…。この席で心掛けるべきはただ一つ、“ディスクゴルフで私が一番笑った時”と題してスピーチをすることです。それでは佐賀県の武藤選手からどうぞ」と振ると、氏は待ってましたとばかりに豪快な乾杯とスピーチで、固まりかけた座の雰囲気を一気に溶かし去りました。スピーチ終了者が次のスピーカーを指名する方式は功を奏し、演説は途切れることなく進み、アンディ・ペインター選手のタイミングの良い半畳は会場をいやがうえにも盛り上がらせました。それにしても、この米人の日本語能力の高さはどうしたことか! どんな時にも当意即妙のドンピシャリの日本語が返ってくる。座の途中、ふすまを半分開けて様子を見に来たのは何とこの店の店長。「すみません、他のお客さんもおりますので少し静かにしてくださいませんか」。司会が「そうする」と約束すると店長は引き下がりました。その後は前にも増しての盛んな甲論乙駁。出席全員がディスクでの自慢話をぶち上げるたんびにヤンヤの拍手喝采となり、友好ムードがいやがうえにも高まりました。うたげの最後は、くじ引きによる鹿児島産の土産贈呈となって交流会はお開きとなりました。
(交流会には後日談があります。前年のオープンの部で岩﨑麻由選手と同点決戦によるサドンデスで勝利を手にしたアンディ・ペインター選手、今回の大会2日目は遅刻という初歩的ミスを犯し、規定による大量ペナルティーで優勝を逸しました。この遅刻の理由は交流会の余勢を駆って立ち寄った店で財布を失くしたことでした。翌朝、交番と店に足を運び回収策を図ったのですが、要領を得ず。こんな気分ではディスクを投げるわけにもいかず、罰点に甘んじたのでした。まこと人生はあざなえる縄のごとしです。夜の帝王アンディは翌日の試合では哀れな落ち武者になりおおせてしまったのです。しかし、アンディエピソードには最終章がありました。失くした財布が出てきたのです。二次会での店のマスターが保管してくれていました! 電話でこの好結果を知った時、筆者は心から快哉を叫びました。アンディのためにも鹿児島の名誉のためにも、本当に良かった。愛すべき男アンディ・ペインター。これからもディスクゴルフ界のため、日米親善のために益々活躍されんことを)。
 7月30日(日)。鹿児島オープン2日目も好天となりました。アマ部門の登場日です。プロ部門は2日目となります。アマの開会式も前日のプロと同じ要領。8時30分プロ・アマ合同の記念撮影。8時50分プロ予選3R18H、アマ予選1R18Hの開始となりました。プロはいよいよ雌雄を決する時、アマの半分は鹿児島県人にしてその一部は初陣。アマの県外選手の一部にはプロ級の腕前も散見されます。日程の都合で1日制のアマ部門にエントリーせざるを得なかったのです。この日はまたフライングディスク協会主催の大学生対象のアンビシャン部門6名と、中高生対象のジュニア部門2名のデモンストレーション競技が追加されました。有川オフィシャルの鳴らすホーンが乾いた空気をつんざき、プロ・アマ一斉にそれぞれのラウンドに敢然と突入しました。あらゆる戦いの常、行く手には思わぬハザード、バンカーそしてデンジャラススポットが待ち受ける反面、木に当たってのホールインワンのタナボタもあります。千差万別の心と体を持つ人々が、紆余曲折のコースに分け入り、同工異曲を奏でながら進めるラウンドは、終局に近づいていきます。てっぺんを目指す全ゴルファーにジャングルルールが適用されます。優勝劣敗、適者生存の厳しい現実が待ち受けています。午前・午後の各18Hを含め、その後のプロ準決勝9H、アマ9Hの決勝で勝負の行方は煮詰まってきました。プロは各部門4名のファイナリストの姿も明らかになってきました。以上の成績は以下のとおり。

1.プロの部
①オープン 1位梶山学184 2位青木雅樹192 3位梶山能安201 4位岩﨑光洋211 
②レディース 1位塚本里香217 2位加藤宏美225 3位中川原友香226
③マスター 1位江原隆夫218 2位廣中卓治228 3位吉岡役245
④グランドマスター 1位櫻井康生217 2位大島竜也226 3位西園良人231
⑤シニアグランドマスター 1位金子栄治216 2位五味渕一彦236 2位山田勝236 

2.アマの部
①アドバンス 1位植村竜士50 2位吉田興司53 3位持留慎吾54
②アドバンスレディース 1位須田優子62 2位田中佐八美69 3位濵中成美70
③マスターレディース 1位山口美津子58 2位金子慶子59 3位松原あゆみ80
④シニアグランドマスター 1位松元辰美60 2位義野正治62 3位上原眞63 
3位安部真一63
⑤シニアグランドマスターレディース 1位田畑志保子67 2位新村澄子69 
3位永野富美代70
⑥レジェンド 1位松元文雄60 2位新村建治67 3位浜上光生70

午後になって勝負はいよいよ白熱化してきました。決勝Rの得点を加えての最終成績は以下のとおり。

1.プロの部
①オープン 1位梶山学211 2位青木雅樹226 3位梶山能安236 4位岩﨑光洋243 最高優勝に輝いた梶山学選手は初日の劣勢を大きく挽回しての結果、さすがです。日本のエースとして今後とも全国大会並びに世界大会でますます実力を発揮されんことを。青木選手は初日の予選18Hではトップに立つほどの大健闘。梶山能安選手は準決勝で岩﨑選手をかわしての第3位。Kajiyama Brothersの一方の雄、あっぱれ。Nonaka family の輝ける星・岩﨑選手は前回の愛妻のリベンジを狙ったが、彼女の応援にもかかわらず報いられず。
②レディース 1位塚本里香250 2位中川原友香261 3位加藤宏美262 4位兼弘真由実296 優勝塚本選手は悠々たる独走による逃げ切りに成功。中川原選手と加藤選手は1点をめぐっての僅少差で明暗を分けました。
③マスター 1位江原隆夫218 2位廣中卓治228 3位吉岡役245 4位日高竜市286 江原選手と廣中選手は安定したペースで1位と2位。予選3Rで3位の田添寛選手は準決勝で調子を崩し5位に後退。 吉岡選手と日高選手がその間隙を縫って順位を上げました。
④グランドマスター 1位櫻井康生252 2位西薗良人264 3位大島竜也269 4位中川達也273 櫻井選手は予選から決勝まで安定したペースで1位を保ちました。西薗選手は前半、起伏のあるペースであったが決勝では4人中ベストスコアーで2位に食い込みました。大島選手はパッティングの時、両足が引きつりながらもバーディを決めました。このプロ意識、現代版木口小平と言えましょう。中川選手は準決勝でふるさとの僚友、武藤・田中両選手を逆転しての4位。
④シニアグランドマスター 1位金子栄治250 2位諸岡通容263 3位五味渕一彦272 4位山田勝277  金子選手は安定ペースで1位をキープ。諸岡選手は決勝で急上昇して2位。山田選手も初(?)プロ参加で大健闘。五味渕選手は準決勝での貯金が効きました。

2.アマの部
①アドバンス 1位植村竜士75 2位吉田興司77 3位持留慎吾80
植村選手は生後1か月半の女児を抱いた若妻と実母の応援を受けての緊張ペースで1位をキープ。長身・イケメンの快男児。次代の鹿児島県ディスクゴルフ界の浮沈は、その双肩にかかります。吉田選手は2回目の参加での準優勝。持留慎吾選手は幕張メッセの全国大会2種目で金・銀メダルを獲得するなど、きらびやかな実績を持つ。
②アドバンスレディース 1位須田優子95 2位田中佐八美99 3位濵中成美109
radiant career を有する須田選手の優勝順当か。田中選手は梶山門下生として実力・意欲共に旺盛。濵中選手はバドミントンで鍛えたグリップの威力を遺憾なく発揮。
③マスターレディース 1位山口美津子86 2位金子慶子89 3位松原あゆみ112
いずれがアヤメかカキツバタ。この年代の日本をリードする3人パワー。
④シニアグランドマスター 1位上原眞88 2位安部真一92 3位義野正治95
上原選手は吉野公園コースを知り尽くす全力投球型。安部・義野両選手はディスクを握って半年にも至らず、その情熱底知れず。
⑤シニアグランドマスターレディース 1位田畑志保子99 2位松元ひとみ102 3位新村澄子103 田畑選手はご存知アキュラシー種目での世界記録達成者。松元・新村両選手は夫君と共にこの道に励む。
⑥レジェンド 1位松元文雄87 2位新村建治94 3位浜上光生104
右サイドスロー1本に賭ける松元選手は、鹿児島県協会のレアメタル。新村選手は大試合に強い一発男。浜上選手は野心と実力の乖離に泣き続ける矛盾男。

以上、取り急いで第4回鹿児島オープンを回顧しました。紙数の関係で上位入賞者のみに言及しましたが、不運にして下位に甘んじた選手の心境、察するに余りあります。どうか気を取り直して次回の当会場でrevengeを、retaliationを、さらにvendettaを果たしてください。
JPDGAは、会長と事務局長の二枚看板で直接指導してくださり痛み入ります。
福岡県・熊本県・佐賀県各協会と北九州クラブの協力に感謝します。
最後に、吉野公園あってこそのイベント開催であったことを強調します。沖静所長傘下の職員の皆様に深甚の感謝を捧げます。
わが親愛なるディスクのともがらよ、鹿児島に来てくださり有り難うございました。
終わりに、戦国大名尼子氏の遺臣・山中鹿之助の歌にわが心を乗せて擱筆といたします。

“憂きことの なおこの上に 積もれかし 限りある身の 力ためさん”

鹿児島県ディスクゴルフ協会会長 浜上光生